2011年3月11日「3.11」

校長 永井康博

 春は別れと出会いの季節でもあります。済美高校でも775名の卒業生が巣立ち、20日の「新入生登校日」には、来年度の入学予定者が登校してきます。来月8日の入学式では、全校を挙げて新入生を歓迎したいと思っています。
 2011年(平成23年)3月11日。宮城県沖130kmを震源とするマグニチュード9.0(日本周辺における観測史上最大)の巨大地震が発生しました。今からもう11年も前のことになります。
 済美高校は、2013年、宮城県仙台市にある東北高校の生徒が来校し、交流会を実施したことがきっかけで、東日本大震災に学ぶ「震災学習」が始まりました。2015年3月の「文化・芸術発表会」には、宮城県気仙沼市の東陵高校の生徒と地元新聞社三陸新報の渡邉眞紀専務をお招きし、震災当時の状況や復興の進み具合などを発表していただきました。
 そのような中、本校生徒から「現地視察に行きたい。」との声が挙がり、4名の生徒が選抜され、2015年11月3日から6日間、気仙沼へ派遣されました。私も引率として同行したので、今回はその時の事をお伝えしたいと思います。
 私たちは、三陸新報社の渡邉さんの取り計らいで、津波で家を失った人々が生活していた仮設住宅を訪問しました。そこの集会所で私たちを待っていてくださったのは、気仙沼市大島の方たちでした。気仙沼のある三陸地方は、過去の大地震とそれに伴う津波で、過去にも大きな被害が発生した場所です。それだけに防災意識が高く、高さ20mを越える大津波に襲われ、物的な被害は甚大だったにも関わらず、犠牲者は比較的少なかったのです。
 町内会長を勤めた男性が、声を震わせ、涙を流しながら私たちに語ってくれました。
 「ハンドマイクを持って、ぎりぎりまで避難を呼びかけたが、残念ながら間に合わなかった人もいた。」「目の前で津波に流されていく人がいるのに、何もできなかった。」「地域全員参加で、もっと危機感をもって訓練を実施していたら、犠牲者を出さずに済んだかもしれない。」
 この男性は最後に、「どんな避難訓練であれ、まずは参加し、自分の命を守るために真剣に取り組んでほしい。愛媛に帰ったら、この事をみなさんにぜひ伝えてください。」と。この言葉は今も忘れられません。
 三陸地方(宮城県~岩手県の太平洋側)には、「津波が起きたらてんでんこ」という合言葉が伝えられています。直接的には、「地震が起きたら津波が来るから、取る物も取り敢えず、各自てんでばらばらに高いところに逃げろ」という意味があるそうです。私は「てんでんこ」という言葉を気仙沼滞在時に、何度も耳にしました。災害時には「自分の命は自分で守れ!」という意味があると私は解釈しています。
 南海トラフ巨大地震が、近い将来に高い確率で発生すると言われています。さらに最近は、2018年の西日本豪雨などの豪雨災害も多発しています。日頃から様々な災害を想定し、もし発生したらどのように行動するかを常に考えておくことが大切です。本校でも校舎の耐震化や非常食の備蓄などの対策を推進中です。
 3月11日には、東日本大震災に関する様々な報道がなされると思います。亡くなった多くの方々のご冥福をお祈りするとともに、「3.11」を災害から「自分自身で自分の命を守ることの大切さを今一度、確かめ合う日」にしたいと思います。

2022年03月01日